燃える午後

           
黄昏を迎える前、
ほんの束の間、
蕾の中に夢を引き入れる。
それは太陽を孕んだ白熱の夢。
わたしは蕾の中に隠れて、
きらきらした一部を奪うことを企んでいた。

いきなり訪れた眩さに視界が奪われる。
戸惑うわたしをさっとかかとに隠し、
躊躇うことなく一気に踏みつける。
落下したショートケーキのように
ぐしゃっと潰れたら、
それは、しるしへ。

体の奥から何かがもぞもぞ蠢き、
足音を立ててやってくる。
どんどん近づいてくる音に
歯がむずむず疼きだすと、
わたしは急き立てられるようにして
夢に齧りつく。

少し固くなったマシュマロみたいな弾力、
溢れ出る精気、
今にも弾けて飛び出しそうだ。
この勢い、逃すものか、と、
必死で口の中に封じ込める。
でも、熱量は、
骨を溶かしてしまいそうなほど熱く、
口の闇に火を放たれたみたい。
舌が狂ったように暴れた。

その温度は、
かつて見た夕日を思い起こさせた。
野蛮なほど爛々として、
見るものを世界を
じりじりと焦がしてゆく落陽。
羨望と虚しさが、
ぎゅっと体を握りしめると、
赤い涙が溢れた。

迸る精気と煌めきが肺を通過すると、
眠っていた鼓動がびくっと跳ね上がって、
思わずそこに天気をもたらし、
夕立が起きた。
白雨は、胸の窓を激しく叩き続け、
やがてそこに小さな虹ができた。
まるで、体が
新しい世界を紡ぎだそうとしていることを
知らせているみたいだった。

蕾の表面が夕焼け色に染まる。
昼間の送粉者たちが、
それぞれの住処へ帰ってゆく。
夜の帳が下りる頃、
わたしは飲み込んだ夢でできた、
白く発光するもう一枚の皮膚を
手に入れるだろう。
もう、世界に月がなくても輝いて、
昼も夜も歌うように夢を見る。

わたしは、無残に潰れたわたしの隣で
膝を抱え、
両腕を見つめながら
白い鱗が生えてくるのをじっと待つ。
熱量が隅々まで届きはじめ、
それぞれの先端が熱くなる。
赤い涙はもう止まっていた。
期待と小さな虹を抱いた胸が、
わたしの目を花弁の外へ向かわせる。

世界からはぐれた
誰からも見えない蕾の中で、
ただじっと、
感じる全ての呼吸に寄り添った。

火照る体がここを夏の真ん中に変える。
耳をすますと、
焼けた喉がカラカラ言い続けていた。


ART LIFE

自分らしく生きる、 生き方をアートする。